交配
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:* 雌しべ側に使う植物は、蕾が大きいもの(側枝より主茎、なるべく早い時期)を選ぶ (※作業をしやすいように) | :* 雌しべ側に使う植物は、蕾が大きいもの(側枝より主茎、なるべく早い時期)を選ぶ (※作業をしやすいように) | ||
:* 花粉側に使う個体は、大きくなり過ぎると世話が大変なので(アラコンを脱着しにくくなる等)、早めに行うとよい | :* 花粉側に使う個体は、大きくなり過ぎると世話が大変なので(アラコンを脱着しにくくなる等)、早めに行うとよい | ||
+ | ::(※ つまり、雌しべ側、花粉側、どちらの植物も早い時期のものが良い) | ||
* 交配に使う2種類の植物のどちらを雌しべ側、花粉側に使うかは、以下の点を考慮 | * 交配に使う2種類の植物のどちらを雌しべ側、花粉側に使うかは、以下の点を考慮 | ||
:* 親個体の自殖種子をとる必要があるか | :* 親個体の自殖種子をとる必要があるか | ||
:* 交配後のF1個体のgenotyping等のチェックが、より簡単・確実に行える組み合わせ | :* 交配後のF1個体のgenotyping等のチェックが、より簡単・確実に行える組み合わせ | ||
:* 花粉、雌しべの稔性 | :* 花粉、雌しべの稔性 | ||
+ | :* 植物の状態=上の項目を参照 | ||
====必要なもの一覧==== | ====必要なもの一覧==== | ||
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| (g) 爪楊枝 || | 絵具用、旗作製用(目印) || | 〇 || | 〇 || | - | | (g) 爪楊枝 || | 絵具用、旗作製用(目印) || | 〇 || | 〇 || | - | ||
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− | | (h) テープ:(マスキングテープ等) || | | + | | (h) テープ:(マスキングテープ等) || | 個体・ラインごとに色分けして使用すると良い || | - || | ○ || | - |
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| (i) 工作用ハサミ || | || | - || | ○ || | - | | (i) 工作用ハサミ || | || | - || | ○ || | - | ||
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::* 蕾ごとにピンセット等をエタノールで洗浄(花粉がコンタミしないように。必ずエタノールを使用) | ::* 蕾ごとにピンセット等をエタノールで洗浄(花粉がコンタミしないように。必ずエタノールを使用) | ||
− | :(4) | + | :(4) 除雄できたら、「目印」を付ける ※アクリル絵の具(爪楊枝の先端に絵具を少量付けて、花柄の片側に付ける)、細く切ったテープ 等 |
::* すぐ下にある(1)で花を除去した花柄にも絵の具を付けておくと、後からわかりやすい | ::* すぐ下にある(1)で花を除去した花柄にも絵の具を付けておくと、後からわかりやすい | ||
− | :(5) | + | :(5) (花茎を1本ずつ、ペーパータイで串に固定する) |
=====<2日目:交配=受粉>===== | =====<2日目:交配=受粉>===== | ||
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* 交配から3日後には、さやが伸び始める。さやが伸びれば受粉成功、伸びなければ受粉失敗。 | * 交配から3日後には、さやが伸び始める。さやが伸びれば受粉成功、伸びなければ受粉失敗。 | ||
* 受粉後のさやがついた花茎は適宜管理する(串への固定等。回収直前のさやが裂開しやすい時期は、他のものと接触しないように注意!) | * 受粉後のさやがついた花茎は適宜管理する(串への固定等。回収直前のさやが裂開しやすい時期は、他のものと接触しないように注意!) | ||
− | * | + | * 交配から2~3週間後には、種が成熟しさやも茶色くなるので、その状態になったら回収する。 |
:* 先細ピンセットで花柄をつまみ、ハサミで切り取り、1.5mlチューブに回収 | :* 先細ピンセットで花柄をつまみ、ハサミで切り取り、1.5mlチューブに回収 | ||
:* '''(注意)この時期のさやは接触すると、割れて種が散らばってしまうので要注意!''' | :* '''(注意)この時期のさやは接触すると、割れて種が散らばってしまうので要注意!''' | ||
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* 交配後のF1種子を播く際には、種の入っているチューブをはじいてさやと種を分離し、さやをピンセットでつまんで除いたうえで、そのチューブ内で滅菌すればよい | * 交配後のF1種子を播く際には、種の入っているチューブをはじいてさやと種を分離し、さやをピンセットでつまんで除いたうえで、そのチューブ内で滅菌すればよい | ||
* 交配が上手くできているか(自殖種子でないこと)は、genotyping等でチェックする | * 交配が上手くできているか(自殖種子でないこと)は、genotyping等でチェックする | ||
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====※ ノートの記入事項==== | ====※ ノートの記入事項==== | ||
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=====<ノートの記入例>===== | =====<ノートの記入例>===== | ||
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2023年12月22日 (金) 13:04時点における最新版
- 雌しべ側、花粉(雄しべ)側の各々に使う植物が、花が咲いて「さやが伸び始めたら」交配ができる。
- 雌しべ側に使う植物は、蕾が大きいもの(側枝より主茎、なるべく早い時期)を選ぶ (※作業をしやすいように)
- 花粉側に使う個体は、大きくなり過ぎると世話が大変なので(アラコンを脱着しにくくなる等)、早めに行うとよい
- (※ つまり、雌しべ側、花粉側、どちらの植物も早い時期のものが良い)
- 交配に使う2種類の植物のどちらを雌しべ側、花粉側に使うかは、以下の点を考慮
- 親個体の自殖種子をとる必要があるか
- 交配後のF1個体のgenotyping等のチェックが、より簡単・確実に行える組み合わせ
- 花粉、雌しべの稔性
- 植物の状態=上の項目を参照
[編集] 必要なもの一覧
備考 除雄 (1日目) 交配 (2日目) 種回収時 (a) 交配専用の精密ピンセット 先端を曲げないように注意! 〇 - - (b) 先細ピンセット:(a)とは別のもの - 〇 ○ (c) 植物用ハサミ - - ○ (d) エタノール 交配用ピンセットの洗浄用 〇 - - (e) 串、ペーパータイ 〇 - - (f) アクリル絵の具(目印用) 蛍光ピンク色 等の目立つ色 〇 - - (g) 爪楊枝 絵具用、旗作製用(目印) 〇 〇 - (h) テープ:(マスキングテープ等) 個体・ラインごとに色分けして使用すると良い - ○ - (i) 工作用ハサミ - ○ - (j) 油性ペン - ○ ○ (k) 1.5mlチューブ - - ○ (l) ノート、筆記用具 等 ○ ○ ○
[編集] 手順
[編集] <1日目:雌しべ側に使う花の雄しべ等の除去(除雄)>
- (1) 雌しべ側に使う花の蕾を選ぶ。以降の作業をしやすい「大きめの蕾(側枝より主茎、なるべく早い時期)」を選ぶ
- 蕾の先端から花弁が見えるか見えないか、くらいの時期のものがよい
- (2) 対象の蕾の近辺にある邪魔なさや、花を取り除く
- (3) 「交配用ピンセット」を用いて、ガク片、花弁、雄しべを取り除く
- 蕾の1番外側のガク片から外す (花茎に対して「背軸側(外側)」のガク片)
- ピンセットで雌しべを傷つけないように注意
- 蕾ごとにピンセット等をエタノールで洗浄(花粉がコンタミしないように。必ずエタノールを使用)
- (4) 除雄できたら、「目印」を付ける ※アクリル絵の具(爪楊枝の先端に絵具を少量付けて、花柄の片側に付ける)、細く切ったテープ 等
- すぐ下にある(1)で花を除去した花柄にも絵の具を付けておくと、後からわかりやすい
- (5) (花茎を1本ずつ、ペーパータイで串に固定する)
[編集] <2日目:交配=受粉>
- (6) 除雄した後の雌しべをチェック(ダメージが無いか、柱頭の"乳頭細胞"が発達して受粉可能な状態になっているか)
- (7) 交配の組み合わせ(雌しべ-花粉)を決めて、花粉側に使う花(植物)が分かるように、雌しべ側に印をつける
- 爪楊枝にテープを貼り合わせて「旗」を作り、「花粉側の植物」「交配日」を記入し、雌しべ側の花茎(串)の根元に挿す、とわかりやすい
- 花の種類等でテープを色分けするとよい
- (8) 花粉側に使う花の基部を先細ピンセットで挟んで、摘み取る
- (9) 花の基部をピンセットでつまむと、花が押し広がった状態になる。その状態で、雄しべの先端の葯を雌しべ側の花の柱頭に接触させて花粉を付着させる
- 雄しべの先端の“花の中心側:向軸側”を接触させる (葯は“花の中心側:向軸側”が裂開し、そこに花粉がついているため)
[編集] <交配後の処理>
- 交配から3日後には、さやが伸び始める。さやが伸びれば受粉成功、伸びなければ受粉失敗。
- 受粉後のさやがついた花茎は適宜管理する(串への固定等。回収直前のさやが裂開しやすい時期は、他のものと接触しないように注意!)
- 交配から2~3週間後には、種が成熟しさやも茶色くなるので、その状態になったら回収する。
- 先細ピンセットで花柄をつまみ、ハサミで切り取り、1.5mlチューブに回収
- (注意)この時期のさやは接触すると、割れて種が散らばってしまうので要注意!
- チューブ(蓋)には、種の情報を記載しておく
- 種を回収したチューブは、種用デシケーターで保管。その際、種を乾燥させるため、チューブの蓋は密閉しない
- プロワイプで栓をする
- 交配後のF1種子を播く際には、種の入っているチューブをはじいてさやと種を分離し、さやをピンセットでつまんで除いたうえで、そのチューブ内で滅菌すればよい
- 交配が上手くできているか(自殖種子でないこと)は、genotyping等でチェックする
[編集] ※ ノートの記入事項
- 雌しべ側の花の個体情報(遺伝子型、個体のNo. 等)
- 花粉側の花の個体情報(遺伝子型、個体のNo. 等)
- 目印の情報(テープの色等)
- 日付(除雄した日、交配日、結実のチェック、さやを回収した日)
[編集] <ノートの記入例>
下記のような表をノートに書いて記録
雌しべ側 | 花粉側 | テープの色 | 除雄日 | 交配日 | 結実チェック | 種とり日 |
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drol1-1 | M2#8-5 | 水色 | 1/13 | 1/14 | 1/17 × 失敗 | × |
drol1-1 | M2#8-5 | 水色 | 1/13 | 1/14 | 1/17 ○ | 1/31 |
Col | HD2Bp::GFP/Col T2#1-3 | 黄色 | 1/13 | 1/14 | 1/17 ○ | 1/31 |